2026年1月下旬に軽井沢で開催されましたデモクラシー・フィットネスの2日間のワークショップを体験してきました。
講師はニールセン・北村朋子さんでデンマーク・ロラン島在住の文化翻訳家・ジャーナリストで、日デンマークの架け橋として食、教育、再エネ、福祉などの分野で発信・講演・企画など幅広くご活躍されている方です。

初日は、「民主主義は自然に機能し続けるものではなく、意識的に鍛えなければ衰えていく」という印象的な問題提起から始まりました。この言葉を聞いたとき、民主主義というと制度や仕組みの話だと思い込んでいた自分にとって、それが「筋トレ」のように日々鍛える対象だと捉え直され、新鮮な驚きがありました。
まず紹介されたのは、「デモクラシー筋」と呼ばれる複数の能力である。好奇心、共感、積極的傾聴、意見を持つ力、反対意見を述べる力、妥協する力など、全部で10の要素があり、これらは誰もが持っているが、使わなければ弱くなるという。中でもこの日は「好奇心」「積極的傾聴」「共感」に焦点が当てられ、実際に体を動かしながら段階的にトレーニングを体験していきました。
印象的だったのは、最初に行われた「身体の安定化」のワークである。深呼吸やゆっくりした動き、感覚に意識を向ける時間があり、対話の前にまず自分の状態を整えることの大切さを実感しました。普段の会議ではいきなり議論に入ることが多いが、こうした準備があるだけで、他者の話を受け止める余裕が生まれるように感じました。
続いて行われた好奇心のトレーニングでは、連想ゲームや「答えを出さずに質問だけを出し続ける」という演習が行われました。これが想像以上に難しく、つい答えや結論を考えてしまう自分の思考のクセに気づかされた。同時に、問いを持ち続けること自体が相手への関心の表れであり、対話の入口になるのだということも理解できました。

その後の積極的傾聴のワークでは、さらに強い気づきがありました。ペアになり、一方が自分の体験を話し、もう一方は一切口を挟まずに聴く。途中で相槌すら控える場面もあり、「聴くこと」にこれほど集中した経験はこれまでなかったです。普段いかに自分が評価や判断をしながら話を聞いているかに気づき、ただ受け取ることの難しさと大切さを実感しました。その後、相手に対する疑問や気づきをメモに書いて渡すというプロセスも新鮮で、言葉にせずとも理解が深まる感覚がありました。
さらに進んで行われた共感のトレーニングでは、「相手に同意すること」と「相手を理解すること」は異なるという点が強調されました。質問を通じて相手の背景や考えに近づいていくプロセスは、単なる会話とは違い、相手の世界に一歩踏み込むような感覚がありました。同時に、表情や声のトーンなど、言葉以外の情報にも意識を向けることで、対話の奥行きが大きく広がることを体験しました。

ワークの中では、日本語や文化的背景についての話も印象に残っています。日本では話の途中で質問を挟むことに遠慮が働きやすいが、本来それは無礼ではなく、むしろ関心の表現であるという指摘は納得感がありました。また、似た意見同士ほど背景を確認しないまま進んでしまうという指摘もあり、日常のコミュニケーションを振り返るきっかけにもなりました。
加えて、デンマークの政治文化の紹介も興味深かいものがありました。選挙ポスターが非常にシンプルであることや、無駄な広報物を減らす姿勢など、日本との違いが具体的に示され、民主主義のあり方が文化と密接に結びついていることを実感しました。
初日を通して感じたのは、民主主義とは遠い世界の話ではなく、日々の対話の質そのものだということでした。誰かの話をどう聴くか、どんな問いを持つか、違いにどう向き合うか——そうした一つひとつの行為が、社会の在り方につながっているのだと腑に落ちました。
まだワークショップは二日目を残していますが、初日だけでも自分のコミュニケーションの前提が大きく揺さぶられました。明日はこれらの「筋肉」をさらにどう実践につなげていくのか、より深い学びになることを期待しています。
※2日目の体験記は来月にアップする予定です。